ストーリーテリングで優秀なグローバルIT人材を採用しよう

日本の労働市場は、少子高齢化による労働力の減少が避けられない状況になっており、新たな労働力確保のためにグローバル人材の採用に力を入れる企業が増えています。同時に、従来と同じ採用活動では優秀なグローバル人材を獲得できないと、採用活動の考え方そのものを見直す動きも盛んになっています。

そんななか、近年の採用活動においてホットワードになっているのが「ストーリーテリング」です。本記事では、ストーリーテリングを活用した採用活動・採用面接について解説していきます。

ストーリーテリングとは?

ストーリーテリングの意味

ストーリーテリングとは、相手に伝えたいことをストーリー仕立てにすることで、より強く印象づけるコミュニケーション手法のこと。事実やデータを軸にして話すのではなく、具体的なエピソード・出来事をメインにして話すのが特徴です。一般的に、ストーリーテリングには以下のような効果があると言われています。

ストーリーテリングの4つの効果

自然に関心を持ってもらえる
一方的に話を押し付けるのではなく、「話に引き込む」のがストーリーテリングの特徴。相手をストーリーに引き込んで話を展開していくため、強制感がなく、自然な流れで興味を持ってもらえます。

イメージとともに印象に残る
事実やデータだけを話しても、相手は5分で忘れてしまいます。ですが、その事実やデータの裏側にあるもの、たとえば「誰が何をしてどんなことが起きたのか?」「どんなやりがいや苦労があったのか?」といったストーリーを交えて語ることで、イメージとともに印象に残りやすくなります。

共感が生まれる
ストーリーテリングによってストーリーに引き込むことで、相手は無意識のうちに「自分に置き換えて」話を受け取るようになります。話を聞いているうちに主人公に感情移入し、自分の経験や価値観などの共通点を発見し、共感を抱きやすくなります。

モチベーションが高まる
ストーリーテリングは、企業の入社式や社員総会などのイベントで社員に理念やビジョンを浸透させるために用いられることがあります。これは、ストーリーテリングを駆使することでメッセージ性や説得力が高まり、意欲をかき立てる効果があるからです。ときに、ストーリーテリングは相手の感情を動かし、モチベーションを高めるきっかけになるのです。

グローバル人材の採用にストーリーテリングを

従来、ストーリーテリングは主にプレゼンテーションや営業などの現場で活用されてきた手法ですが、近年では、採用のシーンでもその重要性が注目されています。

採用活動におけるストーリーテリングの目的は、求職者の「興味・関心を引くこと」「共感度を高めること」、そしてその結果として「優秀な人材を獲得すること」です。

特にグローバル人材の採用においては、文化・慣習などバックボーンの違いから日本企業とのマッチングを図るのが難しいと言われますが、ストーリーテリングによって企業理解を促すことで、マッチング率の改善が期待されています。

ストーリーテリングで採用のマッチング率を高める!

これまでの会社説明会や面接は、いわば、無機質でドライな情報提供がメインでした。企業の「上っ面」しか伝えられないために、ミスマッチを招いていたのも事実です。

ストーリーテリングを用いることで、より深くにある企業の「本質」を感じ取ってもらうことができます。その結果、グローバル人材に「この会社の考え方に共感できる」「この仕事にチャレンジしたい」と思わせることができればマッチング率も高まるでしょう。

これは逆も然りであり、グローバル人材が「自分がイメージしていた企業像と違う」「雰囲気が合わなそう」などと感じれば、早い段階で辞退することができます。

つまり、ストーリーテリングによって深い情報提供をすることで、応募してくるグローバル人材側も「合う・合わない」の判断がしやすくなり、採用のミスマッチを防ぐことにつながるのです。

ストーリーテリングを取り入れた採用面接の4つのポイント

採用面接にストーリーテリングを取り入れるにあたっては、以下のポイントが重要になってきます。

ポイント①:ストーリーはできるだけシンプルに!

ストーリーテリングのネタである「ストーリー」を複雑にしないことが重要。これは、バックボーンが異なるグローバル人材(外国人)に複雑なストーリーを語っても、理解が追いつかないことが多々あるからです。できるだけシンプルなストーリーを用意することで、よりインパクトが増して印象に残りやすくなります。

ポイント②:できるだけ多くのストーリーを用意する!

採用面接では、求職者に合ったストーリーテリングを展開できるのが理想的であり、そのためには複数のストーリーを用意しておくことが重要です。

面接の序盤で、グローバル人材が興味を持っているトピックを見定めます。会社のビジョン、仕事内容、福利厚生、先輩社員など何に関心を持っているのかを把握したうえで、関連したストーリーをチョイスできれば、ストーリーテリングはより効果的なものになるでしょう。

ポイント③:ネタは社内の至るところにある!

ストーリーテリングの素材は、社内の至るところにあります。たとえば、既存の外国人社員にヒアリングをして、素顔が垣間見えるストーリーを準備できれば理想的です。

来日してからの苦労話や、日本人社員と一緒に働くうえで心がけていること、ITスキルや語学力を活かして働くやりがいなど、彼ら・彼女らの本音を伝えることができれば、その企業で働くことをより身近に感じてもらえるはずです。

もちろん、採用担当者の経験も立派なストーリーです。採用担当者が求職者を観察しているのと同じように、求職者も採用担当者を観察しています。特にグローバル人材は、採用担当者を通して「日本人ってどんな感じなのか?」を知りたいと思っています。それだけに、採用担当者が自らをさらけ出すことは、グローバル人材の信頼を獲得するうえで非常に重要なことだと言えます。

ポイント④:「最後まで聞きたい」と思えるストーリーを!

ストーリーテリングでは、相手をストーリーに引き込んだうえで「最後まで聞きたい」「結末を聞かずには帰れない」といった心象を抱かせることが重要です。

たとえば・・・
・来日半年ながら日本人社員以上の活躍をしているミャンマー人社員。彼が毎日続けていることとは?
・他社からヘッドハンティングを受けて揺れていたアメリカ人社員が、会社に留まる決断をした理由とは?
・中国人女性社員のひと言で会社のルールが変わった。彼女は一体、何を言ったのか?

このように相手の興味をそそるもので、なおかつ、その会社らしさや、その会社の社員らしさがにじみ出るようなストーリーが理想的です。欲を言えば、相手が予想できないような結末があったほうが心を揺さぶられ、より強く印象に残ります。

採用コンテンツにもストーリーテリングが有効

ストーリーテリングは採用面接だけでなく、Webサイトなどの採用コンテンツにおいても効果を発揮します。ともすれば平坦なコンテンツになりがちな会社概要や事業紹介も、ストーリーを意識することでより印象に残るコンテンツになります。

企業の内面を感じ取れる採用コンテンツがあれば、求めるグローバル人材を獲得できる確率も高まります。SNSなども併用して、ストーリーテリングを意識した採用コンテンツを展開していきましょう。

まとめ

採用活動にストーリーテリングを導入すること=採用成功ではありません。求職者の心を掴むには、ストーリーの質にこだわらなければいけませんし、それをうまく語れる人材も必要です。

「企業らしさ」がにじみ出るストーリーを魅力的に語ることができれば、きっと自社に合った優秀なグローバルIT人材を獲得できることでしょう。