日本で働く外国人ITエンジニアの副業について

「副業解禁」の社会の流れに合わせて、副業を希望する外国人ITエンジニアも増えています。

ところで、外国人ITエンジニアの副業はもともと法制度から可能なのか、もし可能である場合、会社の中での手続きや、在留制度からそれぞれどういう条件があるか、ご存じでしょうか。

細かい手続きなどもありますので、外国人ITエンジニアが副業をする際の条件・注意点について、この記事でまとめてわかりやすくご紹介します。

1.外国人ITエンジニアの副業

外国人エンジニアが副業をしようとする場合、ハードルは2つあります。

・会社の就業規則で許されるか
・在留資格上、許されるか 「資格外活動」にあたらないか?

それぞれ問題になります。

これら2つのハードルを超えられるときには、外国人ITエンジニアの副業も可能になりますが、就業規則・在留資格、それぞれの注意点と、手続きを解説します。

2.外国人ITエンジニアの副業 就業規則では副業は許可?禁止?

外国人ITエンジニアの皆さんは、就業規則で副業に関する規定があるのを確認したことがあるでしょうか。

就業規則とその違反の効果

就業規則は、会社の従業員のルールブックであり、副業の規定も就業規則にあります。
当然ですが、外国籍あるかどうかなどとの区別にかかわらず、会社の従業員には適用されます。

就業規則には、違反すると、懲戒されることがあります。具体的には、副業を行ったことから就業規則に違反した場合、懲戒処分は厳重注意から、減給・解雇まで、会社との信頼関係の破壊の度合いに応じた処罰があります。会社との信頼関係がどれだけ壊されるかは、適用される就業規則の各条文の内容によります。

副業 かつては「禁止」が多数派だった 現在「許可制」が大半

副業に関する日本の就業規則の規定は、「従業員には職務専念義務があり、副業はしてはならない」とするのが伝統的な内容です。このように、副業について就業規則でいまだに解禁していない職場の場合には、副業は困難です。

しかし、今増えている就業規則は、「副業は許可制で認める。ただし、条件が指定される」というもので、一律に副業を禁止する例は徐々に少なくなってきています。法制度も副業がしやすくなるための改正をしています。

副業の許可条件として就業規則に規定される内容の例

ところで、条件としてよくある例は次の通りです。

例えば、副業の条件には、次のようなものが指定されることがあります。

  • 許可制なので、申請を出すこと
  • 競業避止義務違反はないこと(ライバルを利するようなビジネス・市場が競合する会社での副業はだめ)
  • 本業を圧迫するような時間を使わないこと
  • 副業として何をするのか、会社に届出る。時間や就労先など、届出内容が決められているのでそれにしたがう。
  • 定期的に副業に関する報告を入れる

*上記の内容は、代表的なものであり、個別の内容は在籍先の会社の就業規則をご参照ください。

就業規則で副業の条件が指定されている場合、条件をすべてクリアしないと、副業は就業規則違反となり、懲戒の対象になります。

特に、ライバル会社を利するような副業をするなどというのは、会社との信頼関係を破壊しますから、懲戒処分でも解雇などの重い処分が考えられます。

3.外国人エンジニアの副業 在留資格から可能なもの?

外国人エンジニアの副業は、在留資格から可能なものでなければなりません。

「資格外活動」になるケースに注意

外国人エンジニアの大部分は「在留資格」が「技術」になっています。

在留資格が、「日本人の配偶者」など、日本でできる活動に制約がない例外的ケースを除いては、外国人エンジニアは、原則として、自分の保有している在留資格内の業務に就くことしか認められていません。そして外国人労働者全般、資格内の業務ではない副業を行う場合は、「資格外活動申請」をしなければならないことになっています。

しかし、在留資格内の業務であれば、何社に所属するか、何時間仕事に就くか、といったことは制限がありません。また、在留資格である「技術」の範囲であれば、他の仕事に就くことは必ずしも禁止されていません。

そこで、以下に挙げる、副業が同一資格内の業務であるとして認められる例と、認められない例をご参照いただき、資格外活動許可申請が必要かどうか、ご検討ください。

在留資格「技術」で認められる副業の例

・エンジニアが、プログラミングを週1回教える講師を行う
=>技術業務の範囲内の就労として、在留資格の範囲内となります

・エンジニアが、最新の技術情勢について、定期的に寄稿する
=>上記の講師の例と同様認められています

・エンジニアがボランティアで子供向け電子工作教室のアシスタントをする(無償)
=>無償のボランティア活動は、資格内活動と認められています

在留資格「技術」で認められない副業の例

・エンジニアが独立起業する
=>起業をすることは、経営管理ビザで認められる活動であり、在留資格の範囲外の活動と考えられます。そこで、資格外活動の許可申請をする必要があります。

・エンジニアが、土日コンビニのバイトの手伝いをする
=>外国人の単純労働は原則禁止になっており、その上、現状の在留資格でも認められていません。

さらに、在留資格を取得した際に届出た勤務先をやめる場合、3か月以内に同一資格内の業務で再就職し、届出を14日以内に行わないと、最悪の場合、在留資格が失効することにも注意が必要です。このことから、副業を行うときは、在留資格の維持の観点から、資格内の職についておくことも必要とされます。

4.資格外活動の申請について

例えば、ITエンジニアが、語学学校の講師を行う場合、語学学校講師は「国際業務」なので、資格外活動申請を行ったうえで申請すると許可を受けることができます。

資格外活動許可申請の手続きには、以下のものが必要です。

  • 資格外活動許可申請書
  • パスポート
  • 在留カード

資格外活動許可申請書は出入国在留管理局で入手・または、出入国在留管理庁のホームページからダウンロードできます。

申請許可の条件は、以下の条件に当てはまることです。

  • 在留資格外の許可を受ける際には、本業を辞めないこと
  • 本業の妨げにならないこと
  • 単純労働でないこと

外国人エンジニアの副業が認められるポイントのまとめ

副業が認められるには、以下1もしくは2のどちらかを満たすことが条件となります。

 

  1. 就業規則で認められる範囲であり在留資格内の副業であること(在留資格外の副業は、申請し許可を受ける必要がある)
  2. 在留資格外活動許可を受けること。 ※以下3つの条件を満たすと許可される。
  • 元の仕事を辞めないこと
  • 元の仕事の妨げにならないこと
  • 単純労働でないこと

5.外国人エンジニアの副業 困ったときは?

以上の説明を理解しても、外国人エンジニアが、自身で始めたい副業についてよくわからないときは、よくルールを知っている人、よくルールを知っている専門家に相談すると、時間も節約できて、大変助かります。

そこで、以下の専門部署・専門家に相談しましょう。

  • 就業規則のことは、会社の人事部へ
  • 在留資格・ビザのことは、行政書士へ

人事部も、また外国人登録やビザの専門の行政書士も現在はバイリンガル対応している事業所・事務所が多くなっていますので、相談しやすいでしょう。

まとめ

以上にご説明したように、副業を許す就業規則があると、本業を圧迫しない程度の副業は認められることが多いと考えられます。もちろん、在留資格は問題になりますが、現在の資格内での活動をする場合、あるいは、資格外活動であっても申請の条件がそろう場合は、許可も他に特別な事情でもない限り下ります。

ただし、人事部への届出・入国管理局への届出等、手続きが多くなりますので、その点には注意が必要です。

入国管理局への届出は在留資格の取得の場合と同様、行政書士が専門に扱っているので、時間があまりない・事務仕事を減らしたい、という場合は、副業についても行政書士に依頼するのもよい考えでしょう。