日本のITエンジニアは残業が多い?現場事情と解決策とは

日本の労働環境に対する印象を外国人労働者に聞くと「長時間労働」という答えが返ってきます。実際、日本では「遅くまで働くことが偉い」という文化がこれまで長らく続いてきましたが、昨今の働き方改革による残業時間削減の動きが見られています。しかし、いまだに長時間労働を強いる企業は少なくありません。そこで、仕事とプライベートを大切にしたい外国人ITエンジニアのみなさんに、日本の残業事情と解決策について解説していきます。

日本の残業に関する法律について

日本の労働基準法では、労働時間は1日8時間・1週間40時間以内とされ、これを「法定労働時間」と言います。そして、法定労働時間を超えて労働者に残業(時間外労働)をさせる場合、企業は「労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)の締結」と「所轄労働基準監督署長への届出」を行わなければいけません。この36協定(さぶろくきょうてい)を行なったうえで、労働者は残業することが認められます。

日本での残業の定義とは、法定労働時間(1日8時間/1週間40時間以内)の制限を超えた勤務が「残業」になります。なので、1日10時間働くと、2時間が残業時間に見なされるということです。

2019年4月には法律が改正され、「法定時間外労働」いわゆる「残業」の上限設定がされるようになりました。大企業では2019年4月から残業時間が規制され、中小企業は1年遅れの2020年4月から残業時間の規制が始まります。臨時的で特別な事情がなければ、規制される残業時間の上限は1ヶ月45時間、1年360時間。これを超えてしまうと企業はペナルティを課せられる大変厳しい法律になったのです。この働く人を守る法律のなかで外国人労働者も働いていきます。

>> 36協定の詳細はこちら

ITエンジニアは残業が多いと言われる理由

残業時間の上限が1ヶ月45時間に規制されていても、上限まで残業した場合1日2時間以上も残業することになります。ということは、月20日勤務で毎日10時間以上の労働。法律が改正されたとはいえ、世界と比べて、日本はまだまだ長時間労働の国なのです。特にITエンジニアは残業が多いと言われています。なぜ、そう言われているのかを解説していきます。

残業が多いイメージがついている原因

ITエンジニアの仕事は業務量が多く、必然的に遅くまで残らないと終わらないケースがほとんど。または、遅い時間に急な対応を強いられることがあり、その対応によって退社時間が夜になってしまうケースが見られます。このような、残業してでも仕事を終わらせる文化が根づいてしまっていることで、残業が多いイメージが植えつけられてしまっているのです。とはいえ、IT業界の中でも職種によって残業時間のバラツキがあり、ITエンジニアはそのなかでも残業時間は多い傾向にあります。

ITエンジニアの実際の残業時間

2013年にDODAが実施した全80業種・95職種別の残業時間調査では、13のIT関連職種が取り上げられました。その中で発表された平均残業時間・全体順位は以下のような結果になっています。


出典:「残業の多い職業・少ない職業は?全80業種、95職種別の残業時間調査!(doda)」からグラフを作成

ということから、ITエンジニアであるSE・プログラマの平均残業時間は27.0時間。社内SEの平均残業時間13.9時間と比べて約2倍も残業していることになります。ITエンジニアは社内で業務が完結する仕事ではなく、クライアントとの折衝などもあるため、残業時間が長くなる一因となっています。

残業時間を減らす解決策

ITエンジニアとして日本で活躍していきたい外国人労働者にとって、プライベートを犠牲にすることは大きなストレス。自分が生まれ育った国と同じような働き方ができれば理想的ですが、日本ではなかなか難しいことです。そこで、少しでも家族や趣味、好きなことにかける時間を増やせるよう、残業時間を減らすための方法をいくつかご紹介します。とても魅力的な会社に転職できたのに残業時間が長くて困っている方や、これから転職する会社の残業時間が心配な方は、ぜひとも参考にしてみてください。

業務の優先順位のつけ方

どんな業務にも優先順位の“高低”があります。「重要度が高い」「重要度が低い」「緊急度が高い」「緊急度が低い」といった具合に、業務に取り掛かる前に優先順位をつけていきましょう。下図のようなマトリクスに当てはめていくと、より明確になるのでオススメです。

また、優先順位をつけていくときに「優先することで得られるメリット」「優先しないことで起きうるリスク」「作業時間の想定」「着手することで考えられる効果、その持続性」といった視点も含めて判断していくと、より優先順位をつけやすくなります。

担当するプロジェクトによっては優先順位のマトリックスの軸を変えてもOK。例えば「効果が出やすい」「効果が出にくい」「作業にかかる時間は少ない」「作業にかかる時間は多い」といった指標に変更してみるのも、優先順位を明確にする手段の1つです。必ずしも「重要度・緊急度」で判断しなければいけないことはありませんので、必要に応じて変更してみましょう。

仕事ができると言われているビジネスパーソンの多くが、業務の優先順位をつけるプロフェッショナルです。瞬時に優先順位をつけられるようになれば、悩む時間は減少し、1つひとつの業務のスピードは格段にアップします。“優先順位づけの習慣化”を意識してみてください。身についたら残業時間は減少していきます。

業務を効率化する方法

業務をより効率的に進めていくには「テンプレート」「マニュアル」「効率化ツール」がキーアイテム。この3つを駆使することで、スピーディーに業務を行えます。「テンプレート」の例を挙げると、ビジネスメールや提案資料があります。ビジネスメールは「題名・冒頭挨拶文・署名」といった文面は共通していることも多いのでテンプレート化すると、それだけで時間短縮につながります。提案資料の場合も、フォーマットが決められている場合もあるので、そのまま使い回すことが可能です。

「マニュアル」は作業効率を高めるもの。手順をマニュアル化しておくことで、プロジェクトメンバーの誰かへ教えるときに、1から説明する必要がなくなります。要点を捕捉するだけで品質の高い作業を実現できるのがマニュアルの良さです。最初にマニュアルを作成する時間は取られますが、1度作ってしまえば使い続けられるので業務効率を高めてくれます。

そして「効率化ツール」の活用が、業務により良い影響を与えてくれます。たとえば、連絡ツールとして“Chatwork”や“Slack”の活用はオススメ。複数人数でのやり取りもひと目でわかり、スケジュールの調整もしやすいのが魅力です。その他、Googleの“スプレッドシート”の活用も残業時間の大幅な削減に貢献してくれます。今挙げたような業務の効率化につながる方法を、ぜひ実践してみてください。

業務を分散させる方法

残業時間が増えてしまう原因の1つに、業務の抱え込みがあります。責任感が強く、一生懸命に取り組む姿勢は評価されるべきものですが、それによって残業ばかりしていては、疲労も蓄積。いざ、新たなプロジェクトが動き出したときには手いっぱいで業務が溢れてしまうことも考えられます。そこで「クラウドでの情報共有」や「業務の細分化」など、“業務シェアリング”を意識して日々の業務に取り組んでみてください。

自ら取り組んで理想の働き方の実現を

働き方改革によって労働時間に対する意識は変わりつつあります。少しでも残業時間を減らせないかと、各企業がさまざまな取り組みをしている状況です。しかし、企業のバックアップを頼りにしていても、理想の働き方が手に入るとは限りません。自分自身で働き方を改善して、残業を減らしていくことがとても重要です。今回お伝えした残業時間を減らす方法にチャレンジして、プライベートと仕事をきちんと両立できる効率的な働き方を実現してみてはいかがでしょうか。