日本で働く外国人社員に必要な適応能力「レジリエンス」の重要性

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優秀な外国人社員を採用したのに、日本の環境に馴染めずに能力を発揮してくれない。そんな事態に陥ることがないよう、環境変化への適応能力である「レジリエンス」の獲得の仕方、高め方を解説していきます。

これからの外国人採用に必要なこと

採用難が続く中、国内における外国人労働者は年々増加しています。厚生労働省が発表した「外国人雇用についての届出状況」によると、外国人労働者数は約146万人(平成30年10月末現在)おり、過去最高を更新したとの発表がありました。中でも、在留資格別にみるとIT業界に必要な「専門的・技術的分野の在留資格者」は27万6770 人と、前年同期比で3万8358 人増加しています。今後も外国人社員の採用が増えていく中で、企業として考えなくてはならないのは採用後のミスマッチです。特に最近では、日々上達する可能性がある日本語力よりも、打たれ強さや柔軟性、メンタルの強さなどの「レジリエンス」が重要視されているのです。
参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ/厚生労働省

レジリエンスについて

現代社会における人間関係の複雑化や労働力不足、さらに近年の「働き方改革」や「ダイバーシティ」の促進により、ビジネス環境は大きな変革期を迎えています。これらの複雑化する環境変化に適応する能力として、注目する企業が増え続けているのが「レジリエンス」です。

レジリエンスとは

レジリエンスとは、物質や物体に対して外力が加わった時の跳ね返り・弾力・回復力・復元力などの意味を持ち、工学や物理学の世界で使われていた言葉です。その後、ストレスと共に生態環境学や心理学でも使われるようになり、近年では「環境や様々な状況の変化に対して柔軟に適応する力」として、個人・組織におけるリスク対応能力や危機管理能力を測るために活用されています。

注目されている理由

レジリエンスが注目されるようになった要因は、「労働環境の変化」にあります。これは、仕事量の増加や人間関係によるストレスを感じる日本人労働者の増加だけではなく、人手不足による外国人労働者の雇用や育成に関する環境の変化も大きく影響しています。ダイバーシティの環境下では、国籍などの違いによる個人の思考や文化、価値観の多様化に対応することがとても重要。また、ダイバーシティ・マネジメントの観点から、組織内のレジリエンスを高めることは有効な手段です。すでに欧米では、グローバル企業の多くがレジリエンスを高める研修や育成などを取り入れた組織づくりを行っています。

レジリエンス力を獲得するための取り組み

優秀な外国人社員が本来の能力を発揮するためにも、レジリエンス力を獲得しやすい環境づくりや育成が大切です。まずは、外国人労働者の思考癖を把握することから始めましょう。これは本人も自覚する必要がありますが、失敗してしまった時や思うようにいかない時に、どのような考えや感情になるのか。過去の出来事なども振り返りながら、その傾向を理解した上で状況にあった取り組みを行うと効果的です。

思考や感情をコントロール

感情や思考をはじめ、強みや弱み、価値観などを正しく把握する「自己認識」は、精神面におけるレジリエンス力を高める上でとても大事です。「自分にとって何が大切か」という思考が理解できるようになると、目標に対して結果が出るまで喜怒哀楽の感情をコントロールすることが可能になる。これによって、状況に応じた柔軟な行動がとれるようになっていきます。

小さな成功体験でポジティブに

エンジニアが携わる案件はプロジェクトによっても工数や期間が変わります。例えば、規模の大きな業務を任せるときは目標を細かく区切って設定し、完了するたびに賞賛するというリズムをつくると効果的です。特に外国人労働者にとって、他国で自分の存在価値が認められることやスキルを活かせている実感はモチベーションに繋がります。このポジティブな思考や満足感が定着することで、逆境に陥った時でも、それを乗り越える強い意志や前向きな姿勢が身に付くのです。

ネガティブな思考グセの見直し

失敗した時や不安になる出来事があった時は、国籍関係なく誰もが良い気持ちにはなりません。ただ、これらのマイナスな局面においても、受け取り方やその後の行動によって大きな差が出ます。ネガティブ思考になりがちな人には、なぜそうなっているのかを客観的に受け止めた上で、分析するように伴走しましょう。そうすることで、感情的にならず冷静な判断ができるようになっていきます。

キャリアゴールの明確化

優秀な外国人社員にとって、自分が携わりたい仕事やキャリアゴールが明確であることは、培ってきた実力を100%発揮するためにも重要です。目標とするゴールが見えていれば、困難やストレスがかかるシーンに直面した時でも、絶対に乗り越えるという強い意気込みで仕事に向かってくれます。また、定期的な面談を通して、キャリアゴールまでのプロセスや目標の進捗をフィードバックし、周囲にも現状を理解してもらうことが大切。社内に自分の努力が共有されていることで、自己尊厳や自己効力感が高まり、レジリエンス力も強化されます。

プライベートの充実

外国人労働者の中には、異文化ストレスにより心身の健康が損なわれ、やむを得ずに帰国するケースがあります。これは、仕事で高いパフォーマンスを発揮するためのエネルギーとなる、プライベートの充実度が影響している場合もあるのです。母国にいる家族や友人と離れた場所で、新たな関係を築くのは簡単なことではありません。そのため、仕事以外の交友関係や趣味の時間を確保し、心に余裕をもったライフスタイルを築けるようサポートすることが大切です。

外国人社員が活躍できる組織へ

ダイバーシティにおいて、組織力を高めていくためには外国人労働者の一人ひとりが環境の変化に適応できる状態である必要があります。では、「レジリエンス」を高める効果的な施策はどのようなものがあるのか。人事や育成をはじめとした環境づくりの観点からいくつかご紹介していきます。

レジリエンスを高める研修プログラムの導入

現在、「レジリエンス」を高めることを目的とした研修プログラムは、専門教育機関によって数多く開発されています。例えば、レジリンスの概念を理解した上で、これまでの人生で打たれ強かった場面についてディスカッションし、状況・思考・感情についてグループワークで整理・トレーニングするプログラムがあります。他にも、ストレスが高い職場環境でも心が折れないレジリエンス力を高めるための、マインドフルネス瞑想法を取り入れたプログラムなどもあるので、企業ごとの社風や目的に応じた外部研修を選び、有効活用しましょう。

海外文化を理解したワークライフバランスの促進

日本でもよく耳にするようになったワークライフバランス。しかし、海外に比べると浸透度はまだ低い状態です。これは、ワークライフバランスを「仕事と生活の比率を最適化する取り組み」と誤解している企業が多いことも原因のひとつ。本来は「生活と仕事の調和により得られる相乗効果・好循環」という意味なので、外国人労働者がギャップを感じてしまうのです。世界で最も幸せな国のひとつであるデンマークは、1週間の労働時間が平均33時間であるにもかかわらず、労働生産性は世界ランキング上位。そこには、仕事以外で得られる趣味やスキルアップ、大切な人との時間による幸福度が影響していると言われています。ビジネスにおける多様性が重要視されている昨今、海外とのビジネス文化や習慣の違いを把握し、お互いにとってより良い働き方を追求することが求められています。

予防が大切なメンタルヘルスケア対策

外国人労働者の精神状態に悪影響を与える要因は、労働環境のギャップや職場内の異文化ストレス、母国を離れた生活で感じる寂しさなど様々です。それらの心理的な衝撃や葛藤をケアするためにも、メンタルヘルスケア対策の強化は必須といえるでしょう。企業のトップや上司が主体となって従業員の業務パフォーマンスと心理状態の現状を把握して改善へと導く「ラインケア」、外国人労働者本人がメンタルヘルスに関する知識を正しく習得し、自分自身がどのような場面でストレスを感じるかを把握して対策する「セルフケア」など、社内全体で定期的なメンタルヘルスケアの予防に取り組むことが大切です。

まとめ

2020年代に向けて社会の多様性はさらに進み、国籍や性別を問わず様々な人たちが交わることで、労働環境がより複雑になっていくことは目に見えています。特に異文化ストレスを感じやすい外国人労働者が、あらゆる労働環境において柔軟に適応する能力「レジリエンス」を高めることは、本来期待されるパフォーマンスを発揮する上で重要です。外部の研修プログラムやメンタルヘルスケアなどの対策を早急に進めながら、企業文化としてレジリエンス力を育む環境を定着させ、採用後のミスマッチ解消や定着率を安定させる効果に繋げていきましょう。

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